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EUROPE HOUSE フランス職人館

2007年9月、パリの高級デパートのギャラリー・ラファイエットで「La France vit plus fort」という企画展が開催されました。今までと違う角度からフランスの新しいエネルギーを見つけ出そうという試みでした。

中でも人目をひいたのが、アニェル社の手袋製作のデモンストレーションです。ふっくらした厚みをもち、一点のくもりもなく染め上げられた革は、熟練した職人の手に触れ、より柔らかく、より強靭になり、やがて人の皮膚に似た感触を持つようになります。新しいフランスを表現するためにも職人たちの技術は欠かせない。職人たちの自信に満ちた動きがとても新鮮に見えました。

工房 —歴史

工房イメージ アニェル社の社長であるソフィー・グレゴワールに会ったのは今から10年ほど前のことです。背が高く、豊かな髪を無造作に束ねた美しい女性で、乗馬で鍛えた四肢は均整がとれ、その立ち振る舞いは気品に満ちていました。率直に話し、決断が早く、言ったことは守る。「清潔感のある生き方」と言う言葉があるとすれば、ソフィーの姿勢はまさしくそれでした。

アニェル社は1937年、ソフィーの曽祖父に当たるジョセフ・プーリシュがサン・ジュニアンにある自宅の敷地内に手袋製造の工房を作ったのが始まりです。やがてこの町一番の近代建築の工場を建て、月産平均12,000組の手袋を主としてアメリカに輸出するようになりました。アニェルの手袋は素材の良さと技術の確かさに定評があり「手袋ならアニェル」という時代でした。

—買収劇

1960年代になると、社会の仕組みや消費の形態が変わり、伝統的な工房スタイルの企業は経営が難しくなりました。いくつかあった同業他社も次第に姿を消していきました。アニェル社も例外ではなかったようです。そして1999年、手袋業界大手のアメリカ企業に買収されることになりました。ソフィーはマーケティング担当幹部として新しい会社に残りましたが、ヨーロッパ支社を通じて管理されるアメリカ企業にあって、ソフィーは何を考えていたのでしょう? 私たちがソフィーに初めて会ったのはこの頃だったのです。
正直言うと、アニェル社の製品にほんの少し魅力を感じなくなっていた時期でした。

そして買収劇の第2幕です。株主グループの強力な支援をうけて、ソフィーがアニェル社を買戻しました。支持する株主たちの力と豊富な資力が物を言ったことは確かです。でも最大の武器はソフィー・グレゴワールという一人の女性の「物つくり」にかける意思と能力だったと思います。2001年11月のことです。

—アニェル再生

ソフィー・グレゴワールは今、アニェル社のブランドを守るだけではなく、それをより輝かしいものに、名実ともにフランスのモード界に欠かせないものに仕上げようとしています。

マネキン
作品

2004年11月にはギャラリー・ラファイエットにおいて、もう一つの企画展が開催されました。「フランス手袋展」と名づけられたこの企画展は、16世紀、手袋が未だ宗教や王家の権力のしるしであった時代から、愛の証になり、贅沢や洗練の象徴になり、やがてファッション小物として流行の先端を担う今日に至るまで、その歴史と変遷をたどる画期的なものでした。クリスチャン・ディオールや、アゼディーヌ・アライア、ジャン=ポール・ゴルティエ、ジョン・ガリアーノ、ソニア・リキエル、ロエヴェなど数多くのオートクチュールのグランメゾンが参加して、アニェルの作品に花を添え、企画展そのものがアニェル社の歴史にスポットライトを当てる結果になりました。

アニェル社は現在クリスチャン・ディオールやジャン=ポール・ゴルティエの手袋を製造し、ジョン・ガリアーノ、マーク・ジェイコブス、クリスチャン・ラクロワ、ジヴァンシー、セリーヌ、ランヴァン、スマルト、アニヤ・ハインドマーチといってクリエータ達、またロエヴェ、ロンシャン、ランセルなど皮革メーカーのための手袋を手がけています。

アニェル社はフランスのサン・ジュニアン製造工場に加えフィリピンにも工場を持ち、益々多くなる世界市場の需要に応えようとしています。フィリピンで製造する場合でもデザイン、素材や備品の調達、最終製品チェックは全てフランスで行います。アニェルの手袋製造は、合わせて百ほどの作業工程を必要とします。
しなやかさ、厚み、光沢など全ての点で品質を確認し、選定した革はパッドを使って湿らせ、タルクを引き、伸ばし、パーツごとに裁断し、縫製し、裏打ちをして、形を整えます。裏地のシルクジャージーを一目一目手で縫い付ける工程になると、ワクワクする気持ちを抑えきれなくなります。花のように新鮮な色の、生まれたばかりの美しい肌を持つ手袋が今目の前にあるからです。大切に使いたいと心から思う瞬間です。

作品

エム・シー・エル ヨーロッパハウスソフィー・グレゴワールとともに、今後日本のお客様のためにオリジナルの作品を制作、紹介してまいります。2008〜2009年冬は柔らかなシープスキンと手首から肘上までを同色のニットで編み上げたロング丈の手袋。色は黒とタバと呼ばれる葉巻色の2色。サイズは7、7.5の2種類。カジュアルからセミ・オフィシャルまでお好みに合わせてお使いいただけます。ニットの軽さは和装小物として和服をお召しの方にもご好評をいただいています。100%フランス製です。
お問い合わせは03-3541-1461まで。

アニェル社の製作現場やグランメゾンとの競演をご覧になりたい方は、アニェル社のホームページをご覧ください。
*http://www.agnelle.fr

工房イメージ工房イメージ


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